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まずはチェック!テナントを売る時の手順と注意したいポイント

テナントを売ることを考え始めたとき、何から手をつけていいのかわからず不安になりますよね。初めてテナントを売るとなると、売り出すタイミングの見極めや価格設定、入居中のテナントとの関係性など、気になることが次々に出てきて、どう進めればいいのか迷ってしまうものです。
実際に手続きを進める中では、専門的な用語ややりとりも増えてきます。ネットで調べても情報が断片的だったりして、結局何から始めればいいのかと戸惑ってしまうこともあります。
そんなときこそ、あらかじめ全体の流れと押さえておくべきポイントを知っておくことが、大きな助けになります。そこで今回は、テナントを売る時の基本的な手順と、あとで後悔しないために注意したいポイントについてお伝えします。
テナントを売るなら知っておきたい!基本の手順5ステップ

テナントを売るには、基本となる手順があります。初めてでも迷わず進められるように、ここでは5つのステップに分けてご紹介します。
ステップ1 物件の状態と市場価値をチェックする
テナントを売ることを考えるとき、最初にやっておきたいのが今の物件の状態をきちんと知ることです。築年数はどれくらいか、建物の構造はどうか、設備はどの程度使われているか等を整理しておくと、後から査定をお願いする時にもスムーズに話が進みます。
それから気になるのが「どのくらいの値段で売れるのか」ということですよね。そんなときに役立つのが、国土交通省が提供している「不動産情報ライブラリ」です。ざっくりとした相場をつかむのに便利なサイトで、エリアごとの取引事例や公示地価などがチェックできます。
たとえば、自分の物件が駅チカの商業地域にあるなら、近くで売買された似たような店舗やオフィスの価格を見てみると、「だいたいこのくらいで売れてるんだな」とイメージが湧きやすくなります。数値だけを見ると少し難しそうに感じるかもしれませんが、実際の取引例を知っておくことで、価格設定の目安も見えてきますし、テナントを売るタイミングも考えやすくなります。
ステップ2 無料査定を活用して相場をつかむ
次に取り組みたいのが査定です。できれば複数の不動産会社に依頼して、相場の幅を把握しておきましょう。このとき便利なのが、無料で一括査定できるサービスです。
1社だけの意見に頼ると、相場から外れた金額を信じてしまうこともあるため、3社以上の査定を比べると安心です。査定額には、近隣エリアの成約事例や物件の設備状態、テナントの入居状況が反映されます。
相場感がある程度つかめてくると、実際に売り出す価格をどう設定するかの判断もしやすくなります。
ステップ3 仲介会社を決めて売却を開始する
市場価値をつかんだら、次は仲介会社を選んで売却を進めていきます。ここで結ぶ「媒介契約」にはいくつか種類があり、1社だけに任せる方法と、複数の会社に同時に依頼できる方法があります。報告の頻度や自由度が違うので、自分の希望に合った契約を選ぶのがポイントです。
たとえば、ゆっくりでも確実に売りたいなら、1社にしぼって密にやりとりする方法が合っています。逆に、できるだけ早く広く売りたいなら、複数社への依頼も検討してみてください。
仲介会社はどこでも同じというわけではなく、テナントを売ることに慣れている会社を選ぶのが安心です。住居用ばかりを扱う会社では対応が難しいこともあるので、事業用物件の実績があるかどうか、相談時に確認してみましょう。
ステップ4 購入希望者と売買契約を結ぶ
購入希望者が見つかると、次は売買契約に進みます。このタイミングでは、価格や引き渡しの時期など、細かな条件のすり合わせが行われます。
契約内容に合意できたら、不動産会社が用意する書類をもとに、買主に対して「重要事項説明」が行われたうえで、売主・買主の双方が契約書に署名・押印します。書類の内容をよく確認してから進めることが大切です。
契約時には印紙税が必要になるため、契約金額に応じた金額の印紙を契約書に貼り付けます。たとえば、1,000万円の契約であれば契約書1通につき1万円の印紙税が必要です。
通常、契約書は売主と買主が1通ずつ保管できるように2通作成するので、印紙代はそれぞれが負担するか、どちらが一方がまとめて負担するかを事前に取り決めておくのが一般的です。
また、契約時に買主から手付金を受け取ることになります。これは本契約を結んだ証拠金のようなもので、通常は売買価格の5~10%が目安です。
ステップ5 引き渡しと決済、売却完了まで
売買契約が無事に終わったら、いよいよ引き渡しと決済です。ここで、売却代金の全額が支払われて、物件の名義変更や鍵の受け渡しが行われます。
決済は、たいてい金融機関や不動産会社の事務所で行われることが多いです。買主がローンを利用する場合は、まず銀行からお金が振り込まれて、それを確認してから司法書士が名義変更の手続きを進めます。あわせて、固定資産税や管理費の精算もここで行われるのが一般的です。
当日は、売主・買主・不動産会社・司法書士など、いろんな人が関わってきます。その分スケジュール調整も大切で、「こんなに関係者がいるの?」と驚く方もいるかもしれません。慣れていないと戸惑いやすい部分もあるので、手続きをサポートしてくれる専門家の説明をよく聞きながら進めると安心です。
あとで後悔しないために!テナントを売るときの注意点3選

テナントを売る流れがわかっても、実際に進めていくなかでは「想定外だった…」と感じる場面が出てくることもあります。入居者との関係や設備の状態、税金など、気をつけたいことは意外と多いものです。ここでは、事前に知っておきたい3つの注意ポイントをご紹介します。
注意1 入居者がいる場合は「契約内容」に要注意
テナントにすでに借主が入っている状態でも、そのまま物件を売ることは可能です。ただし、賃貸契約の内容によっては、あとでトラブルにつながることもあるので注意が必要です。
たとえば、契約の途中で売却した場合は、新しいオーナーがそのまま契約を引き継ぐことになります。家賃の額や契約期間、更新のルールなどはどうなっているかを事前に確認しておけば、あとから慌てることもありません。
もし売却後にリフォームをしたいとか、借主に立ち退いてもらいたいと考えている場合、それを勝手に進めることはできません。借主の同意が必要になるケースや、きちんとした法的手続きが求められる場合もあります。
こうした内容をあいまいなままにしておくと、「思っていたのと違った…」と後悔してしまうかもしれません。契約書の内容はしっかり整理しておいて、不動産会社とも共有しておくと、売却の話もスムーズに進められます。
注意2 築年数のある物件でも、魅力として伝える工夫を
築年数が経っていると、「この状態でもちゃんと売れるのかな」と不安になることがあります。でも実は、年数が経った物件だからこそ、魅力を感じてくれる買い手も少なくありません。
たとえば、設備や内装がある程度そのまま残っている場合は、「居抜き物件」として注目されやすくなります。初期費用をできるだけ抑えたい事業者にとっては、必要な設備が整っている物件の方が魅力的に映ることもあるからです。とくに飲食店や美容室などでは、すぐに開業できる物件を探している人も多くいます。
また、古い物件ならではの雰囲気や構造に惹かれて、リノベーション前提で購入を検討する人もいます。最近は、個性を活かした店舗づくりをしたいという声も増えていて、「手を加える余地があること」をプラスに捉える買い手も少なくありません。
築年数がハンデになりそうに思えても、見方を変えれば、それがひとつの強みにもなります。誰にとってどんな価値があるのか、視点を変えてみることで、売却の可能性がぐっと広がるかもしれません。
注意3 税金や費用は事前にしっかり確認しよう
売却で得たお金がそのまますべて手元に残るわけではありません。あとから想定外の支払いに驚かないように、必要な費用や税金は前もって確認しておきましょう。
まず気をつけたいのが、譲渡所得税です。売却価格から購入時の金額や手数料などを差し引いた「利益」が出た場合、その金額に対して税金がかかります。
所有期間によって税率は変わり、5年を超えていれば約20%、5年以下の場合は約39%と差があります。もし取得価格がわからない、あるいは古くて記録がない場合でも、税務署に相談すれば対応方法を案内してもらえます。
そのほかにも、契約書に貼る印紙代や仲介会社への手数料などが必要になります。たとえば仲介手数料は、売却価格の3%に6万円を足した金額(※税別)が上限です。契約金額が大きくなるほど、印紙税の負担も上がっていきます。あとで慌てないためにも、あらかじめ必要な税額をチェックしておくことが大切です。
費用や税金はタイミングや地域によっても変わるため、不動産会社や税理士など、信頼できる人に早めに相談しておくと安心です。売却の利益をきちんと活用するためにも、見えにくい出費を見落とさないようにしておきましょう。
まとめ
さて今回は、テナントを売る手順と注意点についてお伝えしました。
テナントをスムーズに売るためには、まず物件の状態を整理し、相場を確認するところから始まります。そのうえで、信頼できる仲介会社と媒介契約を結び、購入希望者との交渉、契約、引き渡しへと進んでいく流れです。
また、入居者との関係や物件の築年数、売却にかかる費用や税金など、事前に知っておきたいポイントもいくつかあります。準備をしておくだけで、あとから慌てることが減り、納得のいく売却につながりやすくなります。
大切な資産を手放す決断は簡単ではありませんが、その分、次のステージにつながる大事な一歩にもなります。少しずつ情報を集めながら、焦らず進めていきましょう。